そもそも鬱(うつ)病とは?
うつ病は、脳で働く神経の伝達物質の働きが悪くなるなど脳の機能障害が起きている状態で、眠れない、食欲がない、1日中気分が落ち込む、ヤル気や集中力が続かない、何をしても楽しめないといった症状が起こります。
「うつ病がなぜ起こるのか?」原因はまだ明確になっていませんが、近年のうつ病増加の背景には過度なストレスが関係していると思われます。
●仕事によるストレス(人間関係等)
●環境の変化によるストレス(昇進・降格、転勤・引越等)
●金銭的なストレス(貧困、税金、医療費等)
また、うつ病には上記のように比較的診断が行いやすいものの他に、「仮面うつ病」と呼ばれるうつ病とは関係なさそうな症状を主とするものもあります。
●腹痛 ●頭痛 ●だるさ
これらは日常的に起こる症状と考えられますが、例えば「仕事のために起きると度々腹痛が感る」「仕事に行こうとすると身体がすごくだるい」などが慢性的に起こると仮面うつ病の可能性があるかもしれません。
うつ病は一人一人治療法が異なりますし、3~6ヵ月でよくなる方もいれば1~2年に及ぶ方もいます。また、再発の頻度が高いことから、予防の大切さが分かります。
2015年には世界保健機関(WHO)が、世界でうつ病で苦しんでいる人の数は、人口の約5%に当たる3億5,000万人以上に上るという推計を発表しています。
魚に天然の抗うつ効果?
国立がん研究センターと慶応大のチームによる疫学調査(統計的調査)では、青魚などの魚介類をよく食べる人は、そうでない人と比べてうつ病の発症率が半減するとの結果を発表し、大きな話題となっているようですね。
オメガ3脂肪酸には炎症を抑えたり、免疫機能を調整したりする働きがあります。さらに脳に関しては、情報伝達に関わる成分を合成したり、脳神経の栄養になる物質を増やしたりするなど、脳の機能を保護する役割を果たしています。こうした多様な働きが、抗うつ効果を発揮していると考えられます。
この論文は米精神医専誌「Translational Psychiatry」の2017年9月27日号に掲載され、青魚に多く含まれる「オメガ3脂肪酸」によるうつ病の予防効果が報告されており、調査結果では「魚介類を1日111g食べると、うつ病のリスクが低下する」とまとめられています。
1日約110グラムは小さめのアジなら1匹・イワシなら1匹半ほどになります。
この報告は魚離れが進んでいる食生活を見直し、魚介類の脂に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)・EPA(エイコサペンタエン酸)・DPA(ドコサペンタエン酸)などを摂取するために継続的に魚を食べること大切だと知る内容ではないでしょうか。
海外ではすでに予防効果の報告が!!!
日本人を対象にした「オメガ3脂肪酸とうつ病発症リスクの軽減」が疫学調査で確かめられたのは上記が初めてなのですが、海外ではすでにうつ病の予防効果が報告されています。
中国の青島大学の研究チームの報告では、2001~2014年に発表された16件の研究(合計15万278人)を解析し、魚をもっとも多く食べた人はもっとも少なく食べた人に比べて、うつ病の発症リスクが17%低下することが判明しています。
ただし、この傾向は欧州の研究のみで確認されており、欧州以外の研究では、そもそも魚を多く摂取しておらず、比較するのが難しいとされています。
サバ・イワシ・サンマなどの青魚に豊富に含まれるオメガ3脂肪酸を摂取すると、脳細胞膜の構造が変化し、うつ病に対し予防的に働くことが過去の研究で確かめられています。
また、うつ病の発症に関係しているとみられる神経伝達物質であるドーパミンとセロトニンの活動に変化が起こることも分かっています。
秋魚が不漁!
今年はDHA・EPAを多く含む青魚の代表格であるサンマ(秋刀魚)をはじめ、サケ(鮭)やイカ(烏賊)など秋が旬の魚が不漁で、旬の味を楽しむ機会が少なくなっています。
旬の魚というのは、油がのっていてとても美味ですよね?
私たちの「食」を楽しませてくれる、この油がDHAやEPAなどのn-3系脂肪酸なのです。
冬が旬の魚では、ブリ(鰤)やサワラ(鰆)が楽しみですね。私自身は白身より油がのった青魚が大好きで、中でも調理法はシンプルに「塩焼き」が大好物です。
旬の魚の不漁が続く中、高知の企業が幻の高級魚「サツキマス(サケ科)」の養殖に成功したという心躍るニュースもあります。
当然、私は食べたことがありませんので、食の場で会えることを楽しみにしています。